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選択的夫婦別姓制度の反対意見と賛成意見を分かりやすくまとめてみました

選択的夫婦別姓制度 賛成?反対?

選択的夫婦別姓制度をめぐって激しい議論が交わされています。

賛成派の意見、反対派の意見はどのようなものなのでしょうか?

選択的夫婦別姓制度とは?

夫婦が望む場合には,結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。

つまり…

田中太郎さんと加藤京子さんが結婚した場合、3パターン選べます。

パターン1 田中太郎 加藤京子

パターン2 加藤太郎 加藤京子

パターン3 田中太郎 田中京子

この選択的夫婦別姓制度を導入するかどうかで賛否が分かれています。

世論の意見は?

民間と行政でそれぞれ選択的夫婦別姓制度に関する調査をしています。

法務省による調査によれば、平成29年時点で42.5%が選択的夫婦別姓制度に賛成しています。

選択的夫婦別氏制度に関する調査結果の推移(総数比較)
選択的夫婦別氏制度に関する調査結果の推移(総数比較)

(法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について (moj.go.jp))

早大の調査によれば、70.6%が夫婦別姓制度に賛成しています。

早大の調査
早大の調査

神戸新聞NEXT|連載・特集|ニュース解く説く TOKTOK|選択的夫婦別姓なぜ進まない 法制審議会答申から四半世紀 (kobe-np.co.jp)

反対意見は?

家族の一体感を損なう

家族全員が一つの氏であることで、家族の一体感を得られるのです。

氏を変えることにより自己喪失感を覚えるというような意見もあるが、それより
も結婚に際し同じ姓となり、これから新たな家庭を築くという喜びを持つ夫婦のほうが、
圧倒的多数であり、極めて一般的な普通の感覚である。

H2209fuufubessei.pdf (saito.lg.jp)

もし、仮に子供と父親が違う名字であれば、子供の気持ちとしては、父親となんとなく距離感を感じるかもしれません。

名前が家族観に与える影響は大きく、家族の間でひずみが生まれかねません。

社会に定着しているから

外国では選択的夫婦別姓制度が普通のようですが、外国は外国、日本は日本です。

日本には日本の良き伝統があります。

それは日本の「共同体意識」です。
例えば、女性が子供が欲しくないと思った時、欧米では完全に個人の意見が尊重され、親の意見はほとんど影響しません。

しかし、日本の場合は、互いの家の意向をある程度汲み取って判断します。相手方の父親が「死ぬまでに孫の顔が見たい」と言っているから、と妊娠を急ぐ夫婦も多いです。

もし夫婦別姓制度が導入されれば、こういった互いの家を尊重する文化がなくなりかねません。

夫婦同姓制度は、日本では極めて普通のことと認知されている家族制度である。「婚姻後も旧姓のまま仕事を続けたい」と望む女性は、通称名として旧姓を使用することが一般化しており、何の問題も生じることはない。

一般大衆が持つ氏や婚姻に関する習慣、社会制度自体に反する行為であり、共同体意識よりも個人的な都合を尊重する流れを社会に生み出すこととなる。

選択的夫婦別姓制度の法制化に反対する意見書の提出を求める請願(平成22年3月26日) - 福岡県議会公式ホームページ (fukuoka.lg.jp)

家族が崩壊する恐れがある

夫婦別姓制度の導入を許せば、事実婚を増加させ、離婚の増加や婚姻制度の崩壊をもたらすおそれが多分にあります。

名字を選べるようにするだけではないか、と賛成派は言いますが、家族制度に与える影響は深刻です。

安易な事実婚の選択、安易な離婚により社会全体の混乱を招き、婚外子が増えることで将来的な未来を担う子供の健全な育成に支障が出ます。

例えば、すでに選択的夫婦別姓制度を導入した、イタリア、オーストリア、ドイツ、デ
ンマーク、スウェーデン、ハンガリー、フランス、スペインなど欧州の国々では、婚姻率が4割以上も減り、離婚率が2倍になり、婚外子の割合が5割も増加し、北欧、フランスでは婚外子が5割を超えており従来の家族制度が崩壊している。このことは選択的夫婦別姓制度の導入が一因であると思われる。

意見書・決議 | 宮崎県西都市 (saito.lg.jp)

時期尚早である

先ほどの世論調査のとおり、一定反対意見がまだ半数弱います。

一定程度反対意見もありますから、慎重に議論を重ねるべきです。

子供の健全な育成に支障が出る

先ほど離婚率が高くなる懸念について言及しましたが、特に離婚は子供への心理的負担が大きいものです。また、離婚率は虐待率に影響を及ぼすとの説もあります。

個人的な意見を尊重する、と言いますが、健全な子供の育成という観点がなおざりになっています。

中長期的な子供への影響について十分に検証してから導入するべきです。

家庭には次代を担う子供たちを立派に育て上げるという大切な機能があります。

子供の心の健全な成長を考えた場合、夫婦・家族が一体感を持つ同一の姓であることが良いということは言うまでもありません。

選択的夫婦別姓制度の法制化に反対する意見書の提出を求める請願(平成22年3月26日) - 福岡県議会公式ホームページ (fukuoka.lg.jp)

賛成意見は?

手続きが多く不便である

姓を変更するとなると、名義変更をするための手続きが必要になります。

運転免許証、パスポート、銀行口座、クレジットカード、国民健康保険、マイナンバーカード…

これらを変更するには多大な時間と労力を費やすことになります。

特に事業主であれば、会社関係の書類を変更するために多額のお金がかかることもあります。

夫婦同姓は人格権の侵害

早稲田大の棚村政行教授は、

「氏名は個人が尊重される基礎で、どちらかの氏に改めることを強制することは人格権の侵害だ」と夫婦同姓制度を批判しています。

人格権とは、個人の人格的利益を保護するための権利のことです。 これは憲法で定められている基本的人権の一つとも理解されています。

名前はその人の大切なアイデンティティの一部です。

幼少期から慣れ親しんできた姓を変えること、必ずどちらかの姓に変更しなければならない、ということ自体が「人格権」の侵害にあたります。

現在の夫婦同姓制度は、男女平等の理念に反している

民法上は確かにどちらの姓を選択してもいいことになっています。

しかし、事実上、結婚した夫婦の約97%が夫の姓を選択していて、ほとんどの場合女性が改姓する結果となっています。

こういった「原則として女性が姓を変えるべきだ(男性が姓を変えるのは極めて例外的)」という社会的な圧力自体が、男女平等の理念に反しているため、自由に姓を選択できることを明確に定めるべきです。

他の国で夫婦同姓制度を採っている国は極めて稀です。

男女平等ランキングでG7内最下位を取り続けている日本の恥ずべき制度と言えます。

家制度改革

実は、姓と家制度はとても密接な関係をもっています。

昔の明治民法ではこのように定めていました。

妻は、明治民法(1898年施行)によって「夫の家に入る」(同法788条)ものとされ、全て家族は「家の氏を称す(る)」よう強いられた(同746条)。「家」には、法で定められた戸主(妻にとってふつうは義父あるいは夫)がおり、妻を含む家族は戸主に従属する(同748-50条)。そして妻は夫に(も)従属する(同前788条)。

「強制的夫婦同姓」問題の本質は、「家」の論理と戸籍制度である - 杉田聡|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)

妻が夫の姓へ変更することは、つまり、「夫の家に入り、夫に従属する」という無言の圧力が生じることになります。

結婚式では、花嫁の両親への手紙で「今までありがとうございました。私はお嫁に行きます。」と父娘が涙する場面があるかと思いますが、これは暗に「結婚するということは、育ってきた家を離れ、相手方の家に入る」という無言の両家の合意があるため、花嫁の父は寂しさを感じるわけです。

「主人」「嫁」という呼び名に抵抗感を感じる方も多いかと思います。

これは「主人」「嫁」という呼び名に主従関係を感じさせるからです。

こういった社会慣習的な圧力はいまだ根強く、氏を通じて父系の存続を最重要視する明治民法の価値観が、今でも私たちをしばっています。

こういった「家制度」を改革し、新しい男女平等の理念を実現するべきです。

多様な価値観

そもそもこれは「男女平等」という男と女の対立軸のみで語られるべきではありません。

一人ひとりの多様な「家族観」「人生観」があり、それは当然に尊重されるべきです。

実家の姓の存続

墓守などの問題などから「実家の姓を存続してほしい」と願う一人娘の親御さんはたくさんいます。

結婚する際、「どちらの姓にするか」という問題で両家が争うということも多いかと思います。

選択的夫婦別姓制度が実現すれば、実家の姓の存続問題は、一定解消されます。

まとめ

選択的夫婦別姓制度については、選挙でも争点の一つとなっており、今後も引き続き議論が続いていきます。

わたしも振り返ってみると名字というものに振り回される人生でした。

父は異様に「名字」にこだわる人で、「墓守」という役割を背負わせるツールとしての「名字」を非常に重んじていました。

わたしは長女でしたので「必ずや婿養子を連れてこい」ということは幼少期から命令されていました。

実際、夫はわたしの父からのプロポーズ(!)を受け、わたしの名字に変えてくれましたが、次第にいろんなことが上手くいかなくなりました。

男の人が名字を変えるということは、やはり相応に大変なことです。

職場、銀行、パスポート、免許証の申請、家族への説明、周りへの説明(おそらくこれが一番面倒だったと思います)など。

結婚した女性でも感じたことがあると思います。

「自分の名字を変えるってこんなに大変なことだな」と。

男性であればより大変なのかもしれません。

私は名字を変えてもらった負い目を感じ、対等に話をすることができなくなっていました。

結局はそれが直接の原因とはならなかったにしても、遠因となっていろんなことが重なり、離婚となりました。

また、ある友達は言いました。

実は自分の名前は「名字+名前」で、ある美しいルールが保たれており(特定につながるので詳細は伏せます)、結婚して姓を変えるとそのルールが崩れてしまうそうです。

それは耐え難いことではありますが、しかし夫の姓へ変えるのが一般的であるし、好きな人の姓になりたいという思いもあり、自らの希望で夫の姓を選びました。

しかし結婚後、何かうまくいかないのだといいます。

上手く言えないが、名前を書くたびに、自分が美しくなくなるような感覚(これがふさわしい表現なのかはわかりませんが)に陥るのだと。

性同一性障害に自分はなったことはないが、なんとなく近い感覚なような気がすると。

自分が自分でなくなるような…

名前は負のレッテルとなったり、その人のアイデンティティとなったり、望む目標であったり、縛ってしまうものであったり…

私としては、一刻も早く選択的夫婦別姓制度が認められて欲しいと思っています。

しかし、反対意見も根強くあるので慎重に議論していかなければなりません。

夢枕漠「陰陽師」の中でこんな一節があります。

「”呪”とはなんであろう?」

すると晴明は、庭に咲く花を指さして答える。

「あそこに花が咲いているであろう。あれに人が”藤”と名をつけて、みながそう呼ぶようになる。すると、それは”藤””の花になるのだ。それが最も身近な呪だ。」

名字は大切なアイデンティティ。丁寧に議論していきたいですね。

  • この記事を書いた人

もののかほり

離婚→シングルマザー→子連れ再婚(事実婚)の波乱万丈、紆余曲折あって今は幸せな生活を送る30代。 賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/日本証券業協会 ニ種外務員資格

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